「あなたが悪いのよ、クララ…」
Tweet1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:03:44.72 ID:00ghteueO
「私から何もかも奪うんだもの…」
アルムおんじが死に、すっかり廃墟のようになってしまった山小屋でハイジは言った。
「私達…初めから会わなければよかったわね……」
「ハイジ…」
「ふふふ…さようなら。馬鹿で意気地無しのクララ。あれは本音だったのよ。」
「ハイジ…待って!ハイジ―――――――――!!!!!!!」
扉の閉じる音がした。
クララは縛られて冬の山小屋に一人取り残されてしまった。
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:05:31.55 ID:00ghteueO
クララが初めてアルムの山に来たとき、ハイジの中である感情が芽生えた。
「どうして…ペーターがクララを背負うの?」
「クララは歩けないことを利用してるんだわ…」
なんとかしなくては…。
それからと言うもの、ハイジはクララを歩けるように練習させた。
もう山には行かせずに。
表向きはクララのため。
しかし実はクララを監視下に置き、ペーターと会わせないため。
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:08:21.01 ID:00ghteueO
それからというもの、クララをみる度にある感覚に襲われた。
「…」
大切に育てられ、屈託なく笑うクララ。
肌は雪のように白く、金髪に美しい青い目。
ハイジにないものを全て持っているかのように思えた。
私は………。
やり場のない感情がハイジを埋め尽していった。
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:10:57.40 ID:00ghteueO
「ハイジ!」
「…ペーター………」
「クララの調子はどう?」
またか…。
みんなしてクララクララという。
あのおばあさんまで、クララの朗読に涙を流す始末だ。
…。
クララなんて、消えてしまえばいいのに。
そう思うことが多くなり、いつしかクララに対する友情は憎しみに変わっていた。
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:15:22.31 ID:00ghteueO
「…」
すやすやと眠るクララはまるで人形のように見える。
この首を絞めてやろうか…。
最近毎日思うのだ。
足の訓練のときも足をへし折ってやりたいという思いにかられる。
そこにはもう一つの屈折した感情があった。
しかしハイジはまだ気づいてはいない。
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:18:12.70 ID:00ghteueO
「…!」
なにやら表が騒がしい。
クララが車椅子を懐かしみ、不自由な足で取ろうとして壊したらしい。
下には無惨な車椅子の姿があった。
クララが乗ってたらよかったのに…。
運までいいなんて、本当に…こいつは………。
この醜い思いは蓄積していくばかりだった。
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:21:00.21 ID:00ghteueO
思えばハイジの人生は恵まれないものだった。
小さい頃、覚えているのは耳の遠い婆との暮らし…。
ハイジはいつも孤独だった。
唯一頼れるはずのデーテには厄介ものだと思われているのが口に出さなくても伝わってくる。
いや、はっきり言われたことも決して少なくない。
ハイジのどこか歪んだものの見方はこの頃形作られたのかもしれない。
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:24:40.59 ID:00ghteueO
それからは殺人の前科があるというアルムおんじと二人で住むことになった。
ここでの暮らしはハイジにとって初めての経験だった。
もう何も心配しなくていいのだ。
楽しかった。
ペーターやピッチー、大角の旦那やかわいいの。
それにヤギ達、ヨーゼフ。
天国にいるようだった。
ハイジはその生い立ちを感じさせないほどまでに幸せに暮らしていた。
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:28:48.64 ID:00ghteueO
ペーターのおばあさんとお話もした。
ハイジはここで必要とされていたのだ。
これまで散々疎まれてきたハイジにとって初めての経験だった。
ハイジは自分の存在を強く感じていた。
生きる気力に満ち溢れていた。
ペーターと二人だけの秘密のお花畑。
あの場所はハイジにとって特別な場所となった。
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:32:01.96 ID:00ghteueO
口笛も教えてもらった。
いい匂いのする草はヤギの好物だということも。
シロとクマに塩を舐めさせるときは手が擽ったかった。
何より隣にはいつもペーターがいた。
どこか他の子と違うハイジをペーターは何事もなく受け入れた。
チーズやパン、干し肉も二人で食べた。
ハイジはすっかり元気になっていた。
過去を忘れ、現在を生き生きと過ごしていた。
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:35:29.56 ID:00ghteueO
そんなときあの女がやってきた。
ハイジにとって負の過去の象徴のような、あの女が。
ハイジを邪魔もの扱いし、基本的な人格を歪める原因であろうあの女が。
幸せに暮らしていたハイジに恐らくもう一生拭えないであろう暗い陰を落とす出来事の始まりを告げにやってきた。
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:40:15.01 ID:00ghteueO
おんじはこれは危険だと感じていた。
ハイジの身を滅ぼしてしまうのではないか。
何か将来とんでもないことが引き起こされるきっかけになるのではないかと。
おんじは怒鳴った。
その恐ろしい考えも吹き飛ばすように。
考えたくない…あのハイジが………。
しかしハイジの中にある屈折したものの見方にも気付いていたのだった。
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:45:02.70 ID:00ghteueO
アルムおんじは結局折れた。
半やけくそのようになってしまっていた。
あの女は勝ち誇ったかのように笑い、ハイジを騙し連れ去った。
おんじは確信が持てなかった。
ハイジがどうなるのか。
考えれば考えるほどおんじ自身が追い詰められていった。
彼もまた、殺人という過去に蝕まれていたのだ。
結局この決断は誤っていたことになる。
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:48:38.44 ID:00ghteueO
「嘘でしょう…姉さん、義兄さん…」
幼子を抱き、墓の前で呆然とする。
「私は…」
言いたいことは山ほどあった。
仕事も上手く行っていた。
住み込みで働き、貯金も僅かながらできた。
お互いに淡い恋心を抱いていた相手もいた。
それなのに…なぜ。
なぜ今なのだろうか。
デーテは幼いハイジとの今後を考え、押し潰されそうになっていた。
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:53:39.12 ID:00ghteueO
ハイジの泣き声がうるさいと住み込みの仕事がなくなった。
姉の子供を引き取ったというと恋人は離れていった。
貯金を切り崩して生活した。
ハイジを預かってくれる人を必死で探し、毎日朝から晩まで働いた。
ふと気がつくと2年の月日がたっていた。
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 02:58:16.83 ID:00ghteueO
「私は何をやってるんだろう…」
一回考え始めるとずっとその思いに取り付かれてしまう。
なぜ私が面倒をみなきゃいけないの…私の人生はこの子のせいで………。
いや、その前から前兆はあった。
姉のアーデルハイドには何をやってもかなわなかった。
常に嫉妬してきた。
彼女の夫だって先に好きになったのはデーテだった。
それをアーデルハイドは軽々と手に入れてみせた。
ハイジは彼の子でもあるのだ…その思いがあるから面倒を見たのかもしれない。
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:03:11.11 ID:00ghteueO
そんなときドイツで働かないかという話がきた。
願ってもないチャンスだ。
でも気になるのはやはりハイジのことだ。
この子をどうすればいい…どうすれば…………。
答えは出ていた。
しかし殺人を犯したという事実が決断を鈍らせていた。
デーテは結局のところハイジを愛していたのだ。
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:08:39.84 ID:00ghteueO
しかしこの先の見えない生活に限界を感じていた。
今の暮らしから抜け出したいという気持ちが勝った。
「ごめんね、ハイジ…ごめんね……」
決断の日の夜、デーテはハイジを抱いて眠った。
ハイジの幸せを願って一緒に寝たのだった。
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:15:49.19 ID:00ghteueO
「ハイジ…ごめんね…ごめんね……」
デーテはハイジの寝顔を見ながら呟く。
私はこの子の人生を狂わそうとしているのではないか?
いや、ハイジはこれで幸せになれるはず。
デーテは自分の決断が誤りだと認めるのを怖れ、真実を見つめようとしなかった。
そこにはやはり姉や義兄への愛憎が絡んでいたのかもしれない。
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:22:52.92 ID:00ghteueO
ハイジは愕然とした。
夕方には帰ると言ったのに…。
【裏切られた】
頭にあるのはこのことだった。
デーテはもちろん、アルムおんじにたいしての信頼もハイジの心の奥底で急速に失われていった。
前もこんなことがあったような…?
汽車の中でハイジは堪えがたい苦しみに堪えていた。
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:25:02.70 ID:00ghteueO
クララは緊張していた。
もう少しで話し相手が来るのだ。
どうしてもソワソワしてしまう。
「お嬢様」
さっきから何度もロッテンマイアーさんにたしなめられる。
「だって、楽しみなんですもの…」
どんな子かな。
仲良くなれるのかな。
私のことを気に入ってくれるかしら?
クララの胸は期待に満ち溢れていた。
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:31:07.98 ID:00ghteueO
ベルが鳴った。
暫くしてガチャ…っとドアが開く。
ロッテンマイアーさんと女の人が話している。
「あ…」
見えた。
あの子なのだ。
嬉しくなった。
これから何を話そうか。
名前はなんというのだろうか。
早く話したい。
女の人が走り去った。
ロッテンマイアーさんが追い掛ける。
あの子と二人になった。
クララは深呼吸をして話しかけた。
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:35:45.73 ID:00ghteueO
その夜クララはなかなか眠れなかった。
「ハイジ…ふふふ」
早く明日になったらいいのに。
たくさんお話したいわ。
クララの目の前には希望の光が広がっていた。
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:38:34.57 ID:00ghteueO
「おじいさん…ペーター…」
ハイジはまだ実感が沸かなかった。
しかしだんだん昨日の記憶が戻ってきた。
「あ…服………」
あの大切な服。
赤と黄色の、おじいさんが買ってきてくれた大好きな服…。
アルムの山を感じさせるあの服を取り上げられ、ハイジの心はどうにかなってしまいそうだった。
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:40:01.02 ID:00ghteueO
朝から続く礼儀作法、ドイツ語の勉強。
初めてのことばかりで全てが負担になっていた。
毎日夢に見るのはアルムの山…。
フランクフルトの生活で唯一心が安定するのはクララといるときだった。
クララがいてよかった。
セバスチャンも味方だとわかり、いつしかハイジはフランクフルトの生活に慣れていったかに見えた。
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:43:31.53 ID:00ghteueO
しかしやはりそのストレスは相当なものだった。
ドイツ語の授業中、居眠りをしたハイジは夢でアルムを見て現実と混同し、奇妙な行動をとってしまう。
いきなり立ち上がり「さようなら」とあらぬ方向を見て叫んだのだ。
このときハイジの中で何かが芽生え、それにより運命は傾いていったのではないだろうか。
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:45:19.26 ID:00ghteueO
逃げ出そうとしたこともある。
もう我慢がならなくなったのだ。
それは防衛反応だったのだろう。
しかし連れ戻されてしまった。
【ロッテンマイヤー】
今度はこの存在がハイジを大きく歪めていく。
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:51:49.56 ID:00ghteueO
そのときもらった子猫も捨てられた。
後に一匹保護したミーちゃんも。
その度に叱られた。
クララの小鳥を逃がしたときも、テーブルマナーのなっていないときも叱られた。
会う度に小言を言われている気がする。
同じことをしていてもクララは言われないのだ。
不公平ではないか。
理不尽な扱いをされるたび、ハイジは歪められていった。
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:53:24.13 ID:00ghteueO
そんなときクララの父親であるゼーゼマンさんが帰ってきた。
この頃になるとハイジはもう自分から何かをしようという積極性を出さないようにしていた。
ただ淡々とそこにいた。
しかしこの人はハイジにもクララと同じ人形をくれたのだ。
公平な扱い…嬉しかった。
久しぶりに自分の存在を感じられた。
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:56:20.68 ID:00ghteueO
しかしゼーゼマンさんはすぐに帰ってしまった。
その代わりにクララのおばあさまが来たのだ。
「奥様」と呼ぶように言われ、必死で練習した。
ロッテンマイアーの目があるかもしれないとハイジはなかなか心を開けなかった。
しかしそんな心配は無縁だった。
おばあさまはとてもいい方だったのだ。
ロッテンマイアーに意見し、下手したらクララよりハイジの方を可愛がってくれたかもしれない。
それによりハイジとクララはますます親密になっていった。
フランクフルトで一番楽しい時期だった。
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 03:57:46.71 ID:00ghteueO
読んでくれてる人いるみたいで嬉しいです。
今は続きを書いてお礼はあとで言います。
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:01:11.54 ID:00ghteueO
オルゴールの隠し部屋でおじいさんやペーターを思い出す絵を見て泣いてしまったとき、慰めてくれたのもおばあさまだった。
ピクニックにいったときは本当に楽しかった。
しかし…クララに熱を出させてしまった。
歩けないクララを放っておいて少年達と遊んでしまった。
自分はこんなに嫌な人間だったのか…やはり楽しんではいけないのだろうか…。
ハイジは人知れず苦しんだ。
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:01:13.92 ID:k7aLBilJO
なんという暗いハイジ
しかしwktk
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:04:53.86 ID:BLfaiBcr0
ピクニックの回でクララの帽子に蝶がとまるシーンが好き
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:05:52.75 ID:00ghteueO
足が悪く、自分は嫁にいけないと嘆くクララのためにお嫁さんごっこをやった。
おばあさまはその途中で帰ってしまった。
見送ってから戻ると閑散としていてチネッテが後片付けをしていた。
もう終わったのだ…おばあさまはもういない。
ロッテンマイヤーは今までの不満を全て自分にぶつけてくる…。
ハイジのどこかが壊れた。
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:08:46.54 ID:00ghteueO
それからゼーゼマン家では幽霊騒動が起きた。
ゼーゼマンとクララのお医者様が調べたところ、それは夢遊病のハイジだった。
やはりハイジは危ないところにいたのだ。
山に帰れることになった。
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:12:43.58 ID:00ghteueO
クララはハイジが帰ってしまうのを嘆いた。
そして後悔し、自分を責めた。
こうなってしまう前に私が気づいてあげなきゃいけなかったんだわ…。
ハイジ…ごめんなさい…。
私はあなたが大好きなのに、傷付けてしまったわ…。
ハイジの幸せを願い、別れを受け入れた。
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:18:05.80 ID:00ghteueO
やっと帰れる…本当に?
実感はなかなか沸かなかった。
アルムに帰るという希望はもうとっくの昔に捨てたのだから当然かもしれない。
クララと別れ、セバスチャンと汽車に乗った。
クララと離れるのも悲しいが今はそれどころではないくらい緊迫した状態だったのだ。
汽車は行きと同じとは思えないほど清々しい空気に満ち溢れていた。
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:23:09.48 ID:00ghteueO
それからというものハイジは瞬く間に元気を取り戻して行った。
ヤギ達と遊び、ペーターとそり遊びもした。
学校にも通い、他の子供達との交流も深めた。
しかし一番仲がいいのはやはりペーターだった。
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:26:01.87 ID:00ghteueO
競走用のそりを作ると言って家にくるペーターを眺めるのが幸せだった。
おばあさんに本を読んであげているときも、必要とされているんだという実感がハイジを高揚させた。
そうだ、これが私なんだ。
しかしフランクフルトでの出来事はハイジをいつまでも苦しめていた。
63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2008/10/03(金) 04:27:57.81 ID:KSuUrB+A0
支援
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:29:47.62 ID:00ghteueO
ある日手紙が届いた。
クララが山に来るというのだ。
ハイジは純粋に嬉しかった。
辛いフランクフルトでの生活も、クララがいたからあそこまで耐えられたのだ。
ハイジはクララが来る日を待ちわびた。
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:36:21.19 ID:00ghteueO
しかし来たのはクララの医者だった。
ハイジはなんとかしてアルムの山を気に入ってもらおうと努力した。
おんじも協力し、ついにクララが山に来ることになった。
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:36:50.09 ID:00ghteueO
「クララ!」
「ハイジ!」
クララの乗った馬車を見つけ喜ぶ。
しかしそこにはロッテンマイヤーの姿もあった。
ハイジの表情が曇る。
歪められていた記憶が蘇る。
69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:40:46.65 ID:00ghteueO
しかしハイジの脳はそれを押しとどめ、馬車に乗った。
驚く子供達。
ハイジは大好きな山にクララがいる喜びを感じていた。
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:44:47.52 ID:00ghteueO
「アーデルハイド!」
またあの日々が始まった。
しかし違うのはここにはおんじがいてくれることだった。
「ロッテンマイヤーさん」
とハイジやクララをかばってくれる。
しかしその存在だけでハイジを壊すには十分だった。
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:49:16.79 ID:00ghteueO
「アーデルハイド!お嬢様になんてことを!」
私じゃないわ。
クララが言い出したのよ。
「アーデルハイド!」
「アーデルハイド!」
「アーデルハイド!」
うるさいわ!
私はハイジよ…。
ハイジの異変に気づいたのはおんじだった。
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:53:13.08 ID:00ghteueO
「ハイジ、なにをしているんだ?」
小屋の影にいるハイジを見て驚愕した。
「…ヨーゼフのご飯になると思って」
その手には殻を割られ、身も千切られたカタツムリが握られていた。
「ハイジ…」
やはりあの存在はいけない。
おんじは手紙を書いた。
77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 04:57:10.67 ID:00ghteueO
ロッテンマイヤーに対抗でき、ハイジの味方になることの出来るおばあさまがアルムの山に来ることになった。
ロッテンマイヤーは不機嫌になり、ペーターにまで当たり散らした。
ハイジの心はおばあさまを待つことによって保たれていた。
78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2008/10/03(金) 04:57:38.68 ID:DVOp8T/F0
病んでるなあ
81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:02:10.49 ID:00ghteueO
「ロッテンマイヤーさん」
誰もが彼女をそう呼んだ。
子供の頃から打ち解ける相手などいなかった。
遊び、楽しみは悪だと教えられた。
ひたすら優秀、有能を求められそれに答えてきた。
それなのに何故…誰も私を愛してくれない。
彼女も人知れず苦しんでいた。
84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:08:16.75 ID:00ghteueO
私は優秀。
遊びは悪。
何かを楽しむなど堕落した人間のすること。
私は有能。
楽しそうな人を見る度に呪文のように唱えた。
私はあんな奴らとは違うわ。
ちゃんと将来を見据えているのよ。
【一緒に楽しみたい】
この気持ちを押し殺し、優秀な執事を目指し勉強していた。
86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:12:21.54 ID:00ghteueO
そうしてゼーゼマン家への就職が決まった。
「ゼーゼマン家といったらフランクフルトでも1・2を争う大金持ちじゃない!」
「すごいわねぇ」
人々の賛辞が心地よかった。
ますます有能であろうと心に決めた。
89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:15:20.89 ID:00ghteueO
「お嬢様、お勉強の時間です」
ゼーゼマン家の一人娘クララにも自分と同じようにしてほしかった。
そうすれば幸せになれると信じていた。
それは彼女がされたのと同じ教育方法だった。
幼い頃から当たり前だったのでロッテンマイヤーにとっては苦ではなかった。
しかしクララは違った。
恵まれた環境のため、優秀である必要がなかったのだ。
90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:19:24.70 ID:00ghteueO
「もう!ロッテンマイヤーさんはうるさいわ!」
「お嬢様!」
こんなにお嬢様のことを考えているのになぜ…。
彼女は結婚せず、クララを実の子供だと思い育てていこうと懸命だった。
しかしクララは打ち解けてくれない。
あぁ…ここでもか。
私は一人。
でもいいのよ。
私は優秀。
私は有能なんだから…。
お嬢様を立派にするわ。
ひたすら自分なりにクララの幸せを願い行動した。
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:25:27.76 ID:00ghteueO
そんなある日、クララの話し相手が必要だという話がでた。
「確かにお嬢様には同年代の話し相手が必要ですわね」
彼女は賛成した。
周りに募集していることを知らせ、相手を見つけさせた。
最終面接は自分で行い、じっくり吟味しようと決めた。
93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:29:16.44 ID:00ghteueO
来たのはみすぼらしい服を来た汚れた少女と着飾った付き添い人だった。
見た瞬間駄目だと思った。
少女もそうだが、自分だけ着飾るような付き添い人に対してでもある。
いくつか質問をした後、付き添い人は逃げるように帰ってしまった。
「お待ちなさい!」
あんな子を置いて帰られては困るわ…!
必死で追ったが逃げられてしまった。
どうしよう…。
チネッテに水を持ってこさせ、ひたすら考えた。
94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:34:18.66 ID:rQ/y6rTYO
中々面白いじゃないか
95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:34:48.92 ID:00ghteueO
やはり彼女の直感は当たっていた。
召し使いと対等な口を聞く。
テーブルマナーもなっていない。
アルファベットすら知らないのだ。
罰を与えればネズミを持ってくる。
勉強中居眠りをし、椅子に立ち上がり奇声を発する。お嬢様の小鳥を逃がす。
家出をすれば猫を持ち帰り、やかましい騒ぎを巻き起こす。
このままではお嬢様に悪影響だわ…。
なんとかしてお嬢様のためになるようにしないと…。
クララのために必死だった。
96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:38:55.84 ID:00ghteueO
当主のゼーゼマンには何度も訴えた。
しかし彼はわかってはくれなかった。
あげくの果てには彼女が嫌いな「奥様」を呼ばれることになってしまった。
ロッテンマイヤーは絶望した。
いくら奥様といえどもあんな方を呼んだらアーデルハイドに共感して私の考えをわかっていただけないわ…。
あんな…金持ちだからって努力もせず、ただ遊んで楽しんでいる人になんて。
こう思わなければ彼女の人生が否定されてしまう。
危ういバランスで自我が保たれていた。
97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:44:56.91 ID:00ghteueO
思ったとおりだ。
食器を鳴らし、勉強を後回しにさせる。
屋敷で毎日のように遊び、あげくの果てにはお嬢様を森に連れ回し、熱を出させる。
注意をした私は悪になる。
どっちが悪よ。
今がよければいいの…?
私お嬢様の将来を見据えているのよ。
「奥様」は庶民や音楽隊を屋敷に入れ、【花嫁ごっこ】をし汚れた床を置き土産に帰っていった。
98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:49:18.10 ID:00ghteueO
その後、幽霊騒動が起きた。
医者によると、ハイジが山のことを考えるのを禁じたことが原因らしい。
「ハイジを幽霊にしたのはあなただ」
と言われ、はっとした。
アーデルハイド…私は…。
クララを思うあまり、ハイジのことを気にかけていなかった。
それどころか、敵だとみなしていた自分に気がついた。
99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:51:08.66 ID:+/+BGM7WO
自然なハイジだ
嫌いじゃないな
100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:54:23.39 ID:00ghteueO
ハイジが山に帰ることになり安心している自分に気づいた。
これでお嬢様もまともになるわ。
しかしハイジの去った屋敷はどこか違っていた。
ロッテンマイヤーの心に穴の空いたような感情が沸き起こっていた。
「アーデルハ…」
そうだ、もうあの子はいないんだったわ。
いいことじゃない。
平穏に…過ごせるわ。
101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:56:20.85 ID:zGzWOHYiO
切ねぇ‥
支援
102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 05:57:50.31 ID:00ghteueO
もう関わらないかのように思えたが、クララの医者がアルムの山に行ったらいいと言ったため再び会うこととなる。
どんな態度をとればいいのかしら…。
優しくする…?
いいえ、そんなのは…。
何が【駄目】だと縛っているのか。
優秀にも関わらず、根本を理解出来ていなかった。
104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:03:32.94 ID:00ghteueO
おばあさまが来て、ロッテンマイヤーが帰った。
ハイジとクララにとって束の間の幸せな時間が訪れた。
これが最後の純粋な幸せの時間だった。
105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:07:20.75 ID:00ghteueO
クララは山を満喫していた。
大好きなハイジにおばあさま。
優しいおじいさんにペーター。
ある日クララはおばあさまに本を読んでいた。
寝てしまったおばあさまを微笑ましく見る。
そこに一つの影が近づいてきた。
106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:12:27.42 ID:00ghteueO
「!」
牛だった。
クララは思わず木にもたれかかりながら足を踏ん張った。
無我夢中で牛から逃れようとしたのだ。
怖い!
それしか頭になく、崩れ落ちてしまった。
107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:15:43.50 ID:00ghteueO
「クララ!」
おばあさまの声が聞こえる…。
「どうかしたんですか?」
おじいさんがやってきた…。
「クララが…立ったんです。牛に驚いて思わず…」
私が………立った……?
109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:20:06.33 ID:00ghteueO
それからおばあさまは何回も私を立たせようとした。
おばあさま…いつもと違う。
なんか怖いわ…。
ハイジも喜び、私の足はもう立てるということになった。
でも…。
クララは自分の足で立つのを恐れていた。
それは立てなかったときにどうなるのかを恐れていたのかもしれない。
111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:25:46.55 ID:00ghteueO
立つ練習が始まった。
ハイジやおじいさんが一生懸命になってくれている。
ありがたいと同時に期待に答えなくてはという重圧があった。
113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:29:13.94 ID:00ghteueO
おばあさまも待ってるわ。
早く立たなきゃ…立たなきゃ…。
それは夢にまで出てきた。
そしておばあさまが温泉に滞在することになり、お別れのパーティーが開かれた。
114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:35:23.90 ID:00ghteueO
走り回る子供達。
ハイジもペーターも…。
とてもみじめだった。
おじいさんが抱き上げてくれた。
皆と一緒にいたくなかった。
初めて自分から立ちたいと強く思った。
115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:38:30.08 ID:00ghteueO
それからは本当に必死で練習した。
今まで特別努力しなかったクララの初めての挑戦だった。
助けてくれる皆が大好きだった。
ペーターのおばあさんに本を読んで感謝されたときはなんともいえない幸福感に満たされた。
しかしこの頃から気になることが出てくる。
116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:43:55.69 ID:DY3s4J7A0
ほほう・・・
117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:44:40.50 ID:00ghteueO
またあの感じだわ…。
「ハイジ…?」
「なあに」
「あ…なんでもないの」
「そう」
どうしたのかしら、ハイジ…。
なんだか、私を見る目が冷たいような…この感じはなんていうのかしら?
今まで自分に向けられたことのない感情に戸惑っていた。
119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:50:56.69 ID:00ghteueO
努力を続けるクララだったが、なかなか立てるようにならない。
つい愚痴が出てしまった。
「もう駄目だわ!こんな足!私立てないわ!」
「なによ!足のせいにして!」
ハイジに怒られる。
120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:53:53.48 ID:00ghteueO
「足はもう治ってるのよ!それなのに足のせいにして!クララの馬鹿!意気地無し!私もう知らない!」
走り去るハイジ。
「待って…!」
あ…あの感覚………。
121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:57:59.08 ID:sXeqNYsoO
>>1のオリジナルと見せかけて
実はこれが原作者の構想だったりして…
おや?こんな早朝にだれk…
123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:00:46.91 ID:n4R1DxSuO
>>121
つまり>>1は原作者d
122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 06:58:35.72 ID:00ghteueO
ハイジと見つめ合う。
「クララ…」
「ハイジ…私……」
「クララが立ってる…」
ハイジと抱き合い喜んだ。
おじいさんにもペーターにも見せた。
ハイジも前に戻っていたように思えた。
124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:02:22.34 ID:00ghteueO
歩く練習が始まった。
その途中でどうしても車椅子に会いたくなり、壁伝いに歩いていった。
しかし車椅子は転げ落ちてしまった。
私の車椅子さん…。
ずっと一緒だった友達がいなくなった気持ちだった。
125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:06:57.03 ID:00ghteueO
そのときまたあの感覚を味わった。
え…ハイジ……?
ハイジは恐ろしい形相をしていた。
それはまるでクララの死を願うかのような…。
クララは信じたくなかった。
私ったら何てことを…。
ハイジは心配のあまりあんな顔をしてくれているのに。
真実を認めたくなかった。
126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:10:02.11 ID:00ghteueO
ついにクララは歩けるようになり、フランクフルトに帰ることになった。
「おばあさまとパパをびっくりさせましょう!」
「それがいいわ!」
二人で計画をたてた。
そしてそれは見事に成功し、二人は涙を流し喜び、ハイジやペーター、アルムおんじに感謝した。
127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:13:12.27 ID:00ghteueO
「ハイジ…またね!」
「元気でね…クララ」
クララは帰途についた。
屋敷でもずっとアルムの山のことを考えていた。
128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:17:34.82 ID:00ghteueO
お嬢様が帰っていらしたわ。
ロッテンマイヤーはクララの帰りを心待ちにしていた。
屋敷で一人でいる間、沢山のことを考えていたからだ。
129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:22:26.78 ID:zGzWOHYiO
>>1
無理はするなよ
130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:25:20.71 ID:00ghteueO
クララのお医者様とお話をした。
生い立ちから今までのことを全て話した。
山の空気を吸ううちに全てを話したい気になっていたのだ。
自分の考えの偏りに気づいた。
しかし決して間違っているわけではないとも言われた。
楽になった。
楽しむことも大切であり、自分も本心では皆と楽しみたかったのだとわかった。
131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:34:32.00 ID:00ghteueO
それにお医者様は彼女の努力、優秀さを認めてくれた。
今までは疎まれるだけだったのに。
アーデルハイドに悪いことをしてしまった。
私を歪めていたような存在に…私はなってしまっていた。
「今、どんな気持ちですか?そして何がしたいですか?」
「アーデルハイドに…謝りたいですわ。そしてお嬢様と遊ばさせてあげて、それをただ見ていたいです」
お医者様は微笑んだ。
133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:39:08.79 ID:00ghteueO
もうすぐお嬢様が帰っていらっしゃるわ。
あ!馬車の音。
こんな気持ちは初めてだ。
期待に満ち溢れ、ただ喜ばせたい。
クララの姿が見えた。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
クララは一瞬驚いたが、すぐ「ただいま、ロッテンマイヤーさん」と返してくれた。
135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:44:57.58 ID:00ghteueO
「ロッテンマイヤーさん」
ゼーゼマンが言った。
「ロッテンマイヤーさん」
奥様も。
奥様…私今ならわかります。
あなたとお話したかったのです。
「クララがね、立ったんですよ」
「そして歩いたんです」
136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:49:00.89 ID:00ghteueO
「まあ…!」
信じられなかった。
そして心が充実するのを感じた。
「お嬢様…本当に……おめでとうございます………」
思わず涙ぐむ。
よかった…本当によかった……。
アルムの山は…私の心を溶かしてくれたばかりか、お嬢様の足まで…………。
ありがとう…ありがとう。
137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:53:28.91 ID:00ghteueO
「お嬢様、歩く練習はなさらないのですか?」
ふと聞いてみる。
クララはとても驚いていた。
「どうかなさいましたか?お嬢様」
「いえ…なんでもないわ!ロッテンマイヤーさん!私歩く練習をするわ!」
練習に付き合うのが幸せだった。
138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 07:58:14.33 ID:00ghteueO
またお嬢様とアルムに行けたら…。
階段を歩けるまでになったクララを見て考えていた。
「だいぶお上手になりました。これでまたアルムの山に行けますね」
「ロッテンマイヤーさん…!」
冬の間は二人でアルムの山を夢見た。
139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 08:04:50.38 ID:00ghteueO
しかし春が迫った頃、クララのおばあさまが突然倒れた。
すぐにロッテンマイヤーが見舞いに行った。
「ロッテンマイヤーさん。あなたは本当は優しい人。私にはわかっていましたよ」
「奥様…」
「最近は自分に素直におなりのようね。表情がとても柔らかいわ」
「はい。アルムの山のおかげですわ」
ロッテンマイヤーはにこやかに言った。
141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 08:09:24.18 ID:00ghteueO
「まあ、あなたの口からそんな言葉が出るなんて…ふふふ」
奥様も笑った。
「私ももう一回、あの山に行きたいものだねぇ…」
「なにをおっしゃいます。行けますわ。共に参りましょう」
「そうなると、いいんだけどねぇ。」
寂しげな顔で言う。
142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 08:13:17.84 ID:00ghteueO
「そうだ!あなたにこのペンダントをあげるわ。これを私だと思って持って行ってちょうだい」
高価そうなペンダントだった。
「そんな…奥様!私にはもったいのうございます。そうですわ、お嬢様にでも…」
「いいえ、ロッテンマイヤーさん。これはあなたにあげたいの」
真剣な眼差しだった。
「わかりました…でも来年はきっと共に参りましょうね」
奥様は微笑むだけだった。
そして数日後、還らぬ人となってしまった。
144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 08:16:35.70 ID:00ghteueO
「嘘よ!おばあさまがお亡くなりになったなんて!」
「お嬢様………」
その知らせはすぐにゼーゼマン家に届いた。
喜びに満ちた家は一気に悲しみに包まれた。
ハイジからの手紙が来ていたがセバスチャンが「残念ながら今回は行けなくなった」とだけ書いて返した。
145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 08:17:18.60 ID:aaAYrDs70
ハイジで鬱になるとは…
146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 08:21:34.64 ID:00ghteueO
「手紙だよー」
「ありがとう、ペーター。あ!クララからだわ!」
長い冬がやっと終わった。
やっとクララと会える。
複雑な気持ちはあったがハイジはクララに会えるのを楽しみにしていた。
「え…来ない…の………?」
147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 08:27:33.07 ID:00ghteueO
「ハイジ、ご飯だよ。食べなさい」
「…」
「ハイジ」
「…」
あの手紙が来てからというもの、ハイジはずっと干し草のベッドで過ごしていた。
ペーターとも会わず、ご飯もろくに食べずに…。
おんじはフランクフルトに手紙を書いた。
148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 08:28:14.65 ID:00ghteueO
しかし返事は来なかった。
不幸なことに、配達途中でのミスがあり届くことはなかったのだ。
149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 08:32:35.91 ID:00ghteueO
「おじいさん」
「ハイジ!大丈夫なのか?」
「ええ。私はなんともないわ。それよりお腹空いちゃった!ずっと食べてなかったんだもの!」
「…ああ…今準備するよ………」
明らかに様子がおかしかった。
なぜフランクフルトからなんの連絡もないんだ?
不可解な現象に戸惑っていた。
150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 08:37:47.55 ID:00ghteueO
クララ…私を裏切ったのね。
きっと立てるようになったから向こうでお友達でもつくったんだわ。
私のことをあんなに苦しめたのに…あなただけ幸せになるというの?
…この悔しさはどうすればいいの?
ハイジは毎日一人で考えていた。
152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 08:46:29.64 ID:00ghteueO
おんじはもう一度手紙を書いた。
そしてそれはゼーゼマン家に無事届いた。
それはロッテンマイヤーに渡り、悲しみに暮れる彼女にアルムのことを思い出させた。
「私としたことが…いくら奥様のことで忙しいとはいえアルムに手紙を出すのを忘れていたなんて……。」
直ぐに返事を書いた。
155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 09:01:37.75 ID:00ghteueO
「ハイジ…フランクフルトから手紙が来ていた。…………クララのおばあさまが亡くなったそうだよ…」
おんじは悲痛な声で言った。
「おばあさまが…」
ハイジは愕然とした。
あの優しかったおばあさまはもういない…嘘…あれが最後だったの……?
また必ず会えると…絶対会えると信じて疑わなかったのに…おばあさま!おばあさま!
ハイジはずっと泣き通した。
クララが来ない悲しみをはるかに越えていた。
もう二度とおばあさまには会えないのね。
それはハイジの心の大きな支えが一つ失われたことでもあった。
156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 09:06:24.03 ID:00ghteueO
おばあさまの死は皆を悲しませた。
クララの体調は悪くなり、今年のアルム行きは見送られた。
ハイジもまた、ますます塞ぎこむようになった。
157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 09:10:50.65 ID:00ghteueO
「ねぇハイジー、久しぶりに山に行こうよ!」
ある日ペーターが誘ってくれた。
「ハイジ、行っておいで」
おんじが諭すように言う。
「ほら、パンとチーズに干し肉のお弁当だよ」
「やったー!ありがとうおんじ」
あ、懐かしい。
「うふふ…」
「ハイジ…!」
「あはははは!昔とおんなじね!」
「えへへへ…そうかな?」
そういって笑いあう。
「ハイジ…よかった。よかった」
おんじの目には涙が光っていた。
158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 09:12:31.54 ID:tBX4JqGQ0
ハイジってこんな鬱な話だったんだな
期待age
159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 09:17:14.59 ID:00ghteueO
久しぶりの牧場…ヤギ達…こんなに空気が美味しかったなんて。
久しぶりにペーターと食べるお弁当。
あの乳の飲み方も変わってない。
幸せ…。
「ハイジ、まだクララは来ないのかい?」
161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 09:21:39.81 ID:00ghteueO
空気が凍りついた。
「ペーター…クララが…気になるの?」
「そりゃそうさー。また三人でここに来ようよ。きっと楽しいよ!」
そんな…ここは二人の思い出の場所じゃないの…?
いつからクララがそんなに…………。
「ペー…ーは…私と……二………嫌…な……?」
「え?なに?」
「ううん、なんでもない」
「そうか。あ!そのチーズもらっていい?」
「いいわよ…」
クララは好きだけど…でも…………。
ハイジは自分の気持ちがわからなかった。
162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 09:27:49.91 ID:00ghteueO
そして冬になり、冬の家で過ごすようになった。
「ここでさ、パーティーやったよなー。あれ美味しかったなー!」
「もうすぐ春だねー。クララは来るのかな?」
「どれくらい歩けるようになったかなー」
「……………………」
なによ、クララクララクララクララって。
ペーターはそういう意味で言ってるんじゃない。
他の人が聞いたらなんでもないことじゃない。
それなのに………どうして?
私変ね。
クララの話題が出る度に心が痛んだ。
163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 09:31:51.81 ID:00ghteueO
「ハイジー手紙だよー!」
手紙…クララ…?
「はい、これおんじに渡しといてね」
「わかった」
心臓が暴れて手が震える中、ハイジは手紙を開いた。
165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 09:32:56.77 ID:00ghteueO
親愛なるハイジへ
去年はアルムに行けなくて本当にごめんなさい。
急におばあさまがお亡くなりになって、私何も考えられなくなったの。
すぐにあなたに知らせるべきだったのにごめんなさいね。
私はちょっとずつ元気になっていて今年は行けそうなんだけど、都合はいかがですか?
いいお返事を待っています。
クララより
166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 09:39:22.12 ID:00ghteueO
クララ……ここ最近のクララに対する気持ちを忘れ、懐かしさに浸っていた。
結局ハイジはクララに友情を感じていたのだ。
おんじもペーターも代わりになれない対象としてハイジの中で確実に大きな存在となっていた。
170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:02:32.98 ID:00ghteueO
「ペーター!クララが来るわ!」
「本当かい?やったなー」
「嬉しいの?」
「そりゃ嬉しいよー」
おんじはハイジを見ていた。
どんな表情をするのか気になったのだ。
最近のハイジの気持ちに薄々感づいていたからだった。
「そう!私も嬉しい!楽しみね~」
本心から言っているようだった。
おんじは安心し、家の掃除を始めた。
171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:04:42.96 ID:00ghteueO
「お嬢様、支度は出来ましたか?」
「ええ、ロッテンマイヤーさん」
「では参りましょう」
ロッテンマイヤーはペンダントを見つめて微笑み、身につけた。
そして二人はセバスチャンを伴って旅立った。
172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:06:20.49 ID:km3rUEXeO
原作と同じ流れなのがいいな
MXで毎日やってた頃思い出す
173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:08:20.45 ID:00ghteueO
「まだかなー手紙では今日つくはずなんだけど…」
ハイジはペーターとクララを待っていた。
二回目というのは、なんとなく気恥ずかしさがある。
一年ぶりとなると尚更だ。
「あ!ハイジ!あれそうじゃないか?」
その方向にはこちらに向かってくる何人かがいた。
174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:09:17.33 ID:vtaw+GNDO
かなり面白い
175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:09:46.28 ID:f8c8hp8X0
とっても期待age
177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:11:59.93 ID:00ghteueO
「あ!そうだわ!あれがクララよ!歩いてるわ!」
「本当だ!クララだ!歩いてる!」
二人は喜んだ。
友に会えること、そしてその友が歩いてることを。
178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:15:00.03 ID:kUWVd9t9O
ぶっ続けで書いてるのかすげえ
179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:16:57.07 ID:00ghteueO
「ハイジ!」
「クララ!」
かけより抱き合う二人。
すっかり元気になったクララは自分の足で山を登りきったのだ。
「お久しぶりです、お嬢様」
セバスチャンが言った。
「セバスチャン久しぶりね!」
向こうではクララとペーターが話している。
180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:20:48.85 ID:00ghteueO
「お久しぶり…アーデルハイド…」
「ロッテンマイヤーさん…お久しぶりです………」
どうしても萎縮してしまう。
でもなんか雰囲気が変わったような…?
もう皆は歩き出していた。
ハイジも慌てて行こうとする。
「待って…!」
「!?」
181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:24:34.50 ID:00ghteueO
「い…いえ…あの……なんでもございません」
「…」
ハイジは皆の元に駆け出した。
「わたくしの馬鹿…なぜ言えないのです……」
ロッテンマイヤーは悔やんでいた。
182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:25:37.17 ID:rQ/y6rTYO
2時からずっとか・・・
183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:27:49.99 ID:aaAYrDs70
これ面白いわ
184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2008/10/03(金) 10:32:09.70 ID:E7qeNJM/O
>>1
無理すんなよ
185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:38:06.13 ID:NeC4qP5oO
まさかハイジで暗い話とは
188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:38:52.31 ID:00ghteueO
ハイジとクララとペーターは毎日牧場へ行った。
不思議なことにロッテンマイヤーは何も言わなかった。
おんじは手紙のやりとりで彼女の変化を知っていた。
「ロッテンマイヤーさん、お昼にしませんか?」
刺繍を辞めて席につく。
189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:40:00.64 ID:00ghteueO
「最近下の村は物騒でしてな、あなたもここに泊まった方がいい」
「そうですわね…でもせっかくですが、下にはセバスチャンもいますしここではベッドもありませんので」
「そうですか。セバスチャンがいるなら大丈夫でしょうな。でも念のため、ヨーゼフを連れていくといい」
「おじいさん…そこまでの気遣いありがとうございます」
「いやいや、いいんですよ。今度あなたも牧場に行ったらどうです?」
「ぜひ行きたいですわ」
「はっはっは。本当に変わりましたなぁ」
「ええ、そう思います」
穏やかな時が流れていた。
190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:46:05.07 ID:00ghteueO
その後二人は牧場から帰った三人を迎えた。
「それではお嬢様、また明日。おじいさん、アーデルハイド…お嬢様をよろしくお願いします」
「はい、ロッテンマイヤーさん」
「ヨーゼフ!」
「ワン、ワン!」
「じゃあ失礼いたします。ペーターさん、参りましょう」
「うん。じゃあまた明日ー」
191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:52:18.30 ID:00ghteueO
小さくなる姿を見送り、三人で夕食にした。
「おじいさん、なぜヨーゼフは下に行ったの?」
「あぁ、最近村で強盗が相次いでおってな。物騒だから連れていかせたんだよ」
「まぁ、強盗なんて怖いわ。大丈夫かしら?」
「うむ…ここがもう少し広ければよかったんだがな…」
三人は溶かしたチーズを乗せた黒パンを美味しそうに頬張った。
193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:56:17.85 ID:iWlG6QW50
ヨーゼフはチーズ大好きなんだろ
194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 10:56:49.76 ID:00ghteueO
「セバスチャン!いないのですか?セバスチャ………!?」
おかしい。
なにか生臭い臭いがする。
「きゃっ!」
床になにか転がっていた。
「セ…セバスチャン……?」
そこには胸から血を流し、血まみれになったセバスチャンの姿があった。
197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:00:17.00 ID:00ghteueO
声が出なかった。
おじいさんの話を思い出していた。
強盗…まだいるのかしら?
「ワン!ワン!」
「なんだこの犬は!」
「おい!金を持ってるのはその女の方だぞ!」
「金を渡せ!邪魔な犬だ!」
銃声が轟いた。
198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:01:49.14 ID:crF+g0WfO
うぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!
セバスチャン・・・
199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:04:04.59 ID:zGzWOHYiO
なんてこった…
200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2008/10/03(金) 11:05:13.45 ID:E7qeNJM/O
せっかくの…旅行なのに…
強盗どうなるのやら
201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:06:18.33 ID:00ghteueO
「あ…」
ヨーゼフが倒れた。
血が吹き出ている。
逃げなくては………。
必死で足を動かした。
しかし捕まってしまった。
「おい、金はどこにあるんだ」
襟首を持たれ、ゆすぶられる。
「お金を渡したら…どこかに行きますか?」
「あぁいくとも」
…
「奥の部屋の戸棚です…」
息が苦しい。
202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:11:08.05 ID:00ghteueO
「調べてこい」
首を持つ男が仲間に命令する。
「ありました!」
仲間が戻ってくる。
お金なら…なんとかなるわ。
それより助かりたい。
まだまだお嬢様の面倒をみたいわ。
牧場にだって行きたいし、アーデルハイドに謝ってもいない…奥様…助けて………。
ペンダントに手がのびる。
203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:15:09.36 ID:00ghteueO
「なんだ?」
男がペンダントに気づく。
「高そうなペンダントだ、これももらっていくぞ!」
「それは!それだけは!」
「うるせぇ!」
男はロッテンマイヤーの首を絞めた。
「あ………アーデルハイド…ごめんなさい……許して……ハイジ………………………」
「なに言ってんだ!早く死ね!」
「お…嬢……様……………」
205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:16:57.87 ID:zGzWOHYiO
ロッテンマイヤー‥
206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:17:55.95 ID:00ghteueO
次の日の朝、ペーターが血相を変えて家に飛込んできた。
「どうしたの?ペーター」
「大将、なんかあったのか?」
ペーターは息が出来ない様子だ。
何度も深呼吸をしようとしている。
「お…おんじ…ハ…イジ…クララ………」
ペーターは真っ青な顔をしていた。
207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2008/10/03(金) 11:19:12.69 ID:aD6qLm6MO
意外にロッテンマイヤーさんが可愛かったのに…
支援
208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:20:55.36 ID:00ghteueO
「どうしたんだペーター、落ち着きなさい」
おんじがなだめた。
「落ち着いてなんか…いられないよ…昨日…下の村で!」
嫌な予感が走った。
「強盗が…出たんだよ…!」
209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:23:42.16 ID:00ghteueO
互いに顔を見合わせる。
「それで…?」
ペーターの次の言葉を固唾を飲んで見守った。
ペーターは震えながら
「ロッテンさんのとこに入ったんだよ」
と呟いた。
210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:27:37.97 ID:00ghteueO
その日は誰も口をきかなかった。
それぞれが死者との思い出を掘り起こしていた。
ロッテンマイヤーさん…セバスチャン…ずっと一緒にいたのに………嘘でしょ?
ヨーゼフだってとっても仲良しだったのに…こんなことって酷すぎるわ。
ヨーゼフ、あなたの存在は兄弟みたいなものだったわ。おばあさまが亡くなったときみたい。
セバスチャン…フランクフルトでも助けてくれた大好きな人よ…。
ロッテンマイヤーさん…ロッテンマイヤーさんだって、最近変わったみたいで私もっとお話してみたかったのに…………悲しいわ。
211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:31:15.93 ID:00ghteueO
ヨーゼフはアルムの山小屋の横に、ロッテンマイヤーとセバスチャンはフランクフルトに埋葬されることになった。
「亡骸は見ない方がいい」
というおんじの言葉でそのまま別れることになった。
数日間誰ともなく喪に伏していた。
212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:33:47.48 ID:00ghteueO
「ねぇクララ」
ある夜ハイジが語りかけた。
「人は死んでしまうとどうなるのかしら?」
クララは泣きそうになるのを堪えて言った。
「さぁ…天国に行くんじゃないかしら?」
「そう…じゃあみんな天国で幸せに暮らしているのかな?」
「そうね…きっとそうよ」
そして二人は抱き合い泣いた。
悲しみを分かち合い泣くことで苦しみを和らげようとした。
213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:39:03.45 ID:aaAYrDs70
ヨーゼフーーー!!
216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 11:43:06.40 ID:00ghteueO
それから数か月がたち、大分もとの生活に戻っていた。
「もうすぐ冬ね」
「そうね」
「クララはまたフランクフルトに戻るの?」
「そうしようかな」
「いつか冬も一緒に過ごせたらいいのに」
「私もそうしたいわ。そうね…あと何年かしたら、ここで冬を越すわ」
「うわぁーすてきすてき!」
「楽しみにしてるわ」
「私も!クララもここに住んじゃえばいいのに」
「いいわね…ここに住めたら幸せでしょうね」
「うん!何年かしたら一緒に冬を越そうね!約束!」
「ええ、約束ね」
「針千本よ」
「わかってるわ…ふふふ」
楽しげな笑い声が響いていた。
218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:00:06.46 ID:00ghteueO
規制多い…。
度々止まってすみません。
読んでくれてありがとう!
219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:00:28.84 ID:00ghteueO
クララが帰り、冬が来た。
そして春が来て、数年がたち、また冬になった。
「ゴホッ、ゴホッ」
「おじいさん、大丈夫?」
「あぁ、これくらい…ゴホッ」
おんじは煙草が祟ったのか肺が悪くなっていた。
「クララは…どうしてるかしら?」
ゼーゼマン商会は上手くいかなくなり、アルムに来るような余分なお金はなく、クララはずっと来ていないのだった。
220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:01:35.21 ID:00ghteueO
ハイジはふと思うのだ。
クララとはなにか。
私の嫌な経験には常にクララがいるのではないか。
私は今までに幾度となく虐げられてきた。
クララはどうだ、愛され慈しみながら育てられたのではないか。
足も治り、もうなにも引け目はないのではないか。
それに比べ自分は…。
昔の嫌な記憶が度々ハイジを襲うのだった。
222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:05:21.84 ID:00ghteueO
「ハイジー」
ペーターがやってきた。
「久しぶりね。元気だった?」
「あぁ、元気だよ!」
楽しい時間。
ペーターは今大工に弟子入りしている。
昔から木工細工が得意だったペーターだから、仕事もすんなりこなしているらしい。
「じゃあまたね、ハイジ!」
これがペーターと会う最後になってしまった。
223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:06:55.85 ID:aaAYrDs70
ペーターに死亡フラグ?!
224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:08:20.36 ID:N5ZitEqZO
どんどん>>1にシナリオが繋がってきたな…
226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:10:00.28 ID:00ghteueO
ペーターが事故にあって死んだと聞かされた。
おばあさんも亡くなったあの家で一人で生活するおばさんは大丈夫だろうか。
ハイジは考えた。
それよりも…ペーター……ここに来たときからいつも一緒で仲良しだったペーター。
ここ何年かはすっかり大人びていてハイジは密かに憧れていたのだ。
「ペーター…ペーター…………」
ハイジの心の箍がまた一つ外された。
228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:12:18.81 ID:00ghteueO
ますますハイジは自分一人で考えるようになった。
なぜ…?
なぜこんなにクララと比べてしまうの?
私の評価ってなに?
どれが本物なの?
私は邪魔なの?
それとも必要なの?
どうしてクララは無条件で必要なの…?
…ペーター…おばあさま…ヨーゼフ…セバスチャン…おばあさん……。
ロッテンマイヤーさん…私あなたが憎いのかそうでないのかわからないの。
なぜか…クララの方が憎いわ。
恵まれてるからかしら。
私はあなたが恵まれていないことに気づいていたのかしら…?
229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:13:16.97 ID:00ghteueO
でもクララは好き…それも本当なのよ。
クララ自体は大好きよ。
でも他のものが入り込むと…どうしても悔しがってしまうの。
悔しいなんて思いたくない!
もうこんなこと考えるのは嫌よ…なにも考えたくないわ………。
孤独と寒さがハイジを蝕んでいった。
230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:16:13.99 ID:00ghteueO
「ゴホッ、ゴホッ…」
「おじいさん…大丈夫?」
「あぁ…大丈夫…だよ………」
しかしどうみても大丈夫ではなかった。
「ハイジ…お前は…強い子だよ…優しい子だ……」
ハイジはこれを聞いて最近の感情が溢れだした。
231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2008/10/03(金) 12:17:48.76 ID:CLuxfqDE0
ペーターは軍隊に入ったあと、ハイジと結婚
ハイジは賢く育って村の教師
豆知識な
232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:18:34.36 ID:00ghteueO
「私は強い子なんかじゃないわ!優しい子でもない!」
小さい頃のように泣くハイジの頭をおんじはそっと撫でる。
「いいや…お前は強い、優しい子だ」
ハイジは首を振る。
「おじいさんは本当の私を知らないんだわ。私が…どんなにひねくれているか、屈折してるか知らないでしょう!どんなに毎日苦しんでいるか…もう嫌よ!苦しい思いをするのはもう嫌!」
234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:22:29.10 ID:00ghteueO
「でも全てそうかと思ったら純粋なお前もいる、そうだろう?」
「え…………」
おんじは微笑んだ。
「わしは全部わかってるよ、ハイジ」
ハイジは泣き出す。
「教えて…」
「ん?」
「教えて…おじいさん。どうしたら私はこの醜い気持ちを抑えられるの?」
「ハイジ…」
「教えてよ!」
235 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:24:22.41 ID:00ghteueO
「もう苦しむのは嫌なの!教えて!おじいさん!お願いよ…お願い………」
ハイジの悲痛な叫びが続く。
「ハイジや」
おんじが呟く。
耳を近づけないと聞こえない。
「お前はいい子だよ…わしにはわかる。これからも元気でな。大丈夫、お前なら…大丈夫………」
「おじいさん…?」
アルムおんじは安らかに永遠の眠りについた。
「おじいさーーーーん!!!!!!!!」
ハイジはとうとうアルムの小屋に一人になってしまった。
236 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:27:07.20 ID:f8c8hp8X0
おじいさん(´;ω;`)ウッ…
237 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:27:54.81 ID:iWlG6QW50
教えて・・・アルムのもみの木よ・・・
239 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:30:45.03 ID:zGzWOHYiO
おんじ。.゚・(ノД`)・゚・。
240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2008/10/03(金) 12:31:54.60 ID:8uVLeLqi0
あ・・れ・・・・
かなり前にちょっと開いた時は
ハイジ「平和主義者は戦場じゃ生きていけねえんだよォォッ!クララァーーッ!」
だった気がするのに、なんだ・・・この・・・・・
ハイジ・・・・・。
241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:32:03.10 ID:00ghteueO
同じように一人でいるブリギッテのもとを訪ねてみた。
しかしそこには誰もいなかった。
数日後、首を釣っているのが見つかった。
もう本当に誰もいない…私も皆のところへ行ってしまいたい。
誰も………?
いや、クララがいるわ。
クララ…会いたい…クララ…クララ…。
243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:37:21.25 ID:00ghteueO
そんなある日手紙が届いた。
父が死に、屋敷も全て売り払ったクララがアルムの山に来るというのだ。
クララが来る…クララも一人……同じだわ。
早く会いたい…話したい……………。
244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:39:14.71 ID:00ghteueO
「ハイジ!」
思わずまどろんでしまったハイジに誰かが声をかけた。
「…?」
「ごめんなさい、寝てたのね」
そこにはあの時より少し大きくなったクララがいた。
246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:40:58.50 ID:aaAYrDs70
死にすぎwwwww
247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:41:10.77 ID:00ghteueO
「クララ…?クララなのね!」
「ええ…そうよハイジ!本当に久しぶり!」
二人は互いの無事を喜びあった。
そして悲しみを分かち合った。
248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:44:47.22 ID:/odYZRNtO
無事wwww
舞台は戦場ですか
250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:45:18.58 ID:N5ZitEqZO
再会キタコレ
251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:45:44.12 ID:00ghteueO
「本当に…誰もいなくなってしまったわね」
「そうね…」
「でも私にはあなたがいるわ、ハイジ」
ハイジは嬉しかった。
にも関わらず素直に喜ぶのを拒むものが心の中にあった。
なぜよ…なんでまた出てくるの?
252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:46:51.55 ID:00ghteueO
「村も寂しくなったでしょう…皆引っ越していってしまったのよ」
「本当にね…屋敷の召し使い達ももう連絡は取れないし…」
「デーテおばさん!」
ハイジは急に思い出した。
「デーテおばさん…知ってる?クララ?」
クララはばつの悪そうな顔をした。
「どうしたの?なんかあったの?」
253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:48:07.05 ID:00ghteueO
「あのね…ハイジ、言いにくいんだけど…」
「じゃあ言わなくていいわ。これだけ……生きてはいるの…?」
クララは首を横に振った。
あぁ…本当に誰もいなくなってしまった。
クララ…あなたの存在ってなんて大きいの。
あなたがいなければ、どうなっていたか…。
でもあなたがいることで…………。
「ハイジ?」
「あ、なんでもないの!ご飯食べましょう」
二人は久しぶりに一緒に食事を取った。
254 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:48:47.09 ID:00ghteueO
その夜昔のように一緒のベッドで寝た。
「狭くなったわね」
「本当にね」
自然と笑いあう。
「おやすみなさい、ハイジ」
「おやすみクララ……」
クララは先に寝入ってしまった。
255 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 12:49:48.05 ID:00ghteueO
クララ…あなたを見ると、フランクフルトでの日々を思い出すのよ。
そこからデーテおばさん、昔の家、疎まれた日々へと繋がってしまうの…。
あなたが悪いんじゃないってわかってるわ…。
それなのになんだか…全ての感情があなたに向かってしまうの。
なんでかしら。
私…やっぱりおかしいんだわ……。
ハイジはクララに背を向けて寝た。
259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[規制の馬鹿!意気地無し!]:2008/10/03(金) 13:00:02.28 ID:00ghteueO
「ねぇハイジ」
何日かたったときにクララが話しかけた。
「なに?」
「アルムの山小屋に行ってみたら駄目かしら…?」
「行きたいの?」
「ええ、見てみたいわ」
「いいわよ。行きましょう」
こうしてあの思い出の小屋に旅立った。
260 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[規制の馬鹿!意気地無し!]:2008/10/03(金) 13:00:13.75 ID:00ghteueO
「冬の山は危険だからロープや食糧、暖かいコートを持ってくのよ」
「そうなの。普通は誰も行かないんでしょうね」
「そうよ。おじいさんも降りてたくらいですもの」
準備をし、出発した。
261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[規制の馬鹿!意気地無し!]:2008/10/03(金) 13:00:55.37 ID:00ghteueO
ペーターの小屋が見えた。
更に登っていくと、見慣れたモミの木とあの小屋が見えた。
「まぁ、懐かしい」
クララが言った。
「私はここで歩けるようになったのよ」
「そうだったわね」
ハイジは言いながら思った。
私はここで嫌な気持ちがするようになったんだわ…クララ……クララ………。
ハイジはそう思うと衝動的に荷物にあったロープを手に持ち、クララの手を縛り上げた。
262 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:01:43.27 ID:N5ZitEqZO
ついに……繋がった……
263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:02:55.48 ID:+18UWxdu0
ああ…ここで>>1に
264 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[規制の馬鹿!意気地無し!]:2008/10/03(金) 13:03:06.12 ID:00ghteueO
「!?」
なにがおこったのか解らなかった。
「え…?」
あっと言う間に足も縛られる。
「ハイジ?ハイジなの!?」
「…そうよ」
背後で冷たい声がした。
265 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[規制の馬鹿!意気地無し!]:2008/10/03(金) 13:03:40.96 ID:00ghteueO
「ハイジ…どうして…?」
「わからないの…?」
ハイジの顔は狂気に満ちていた。
「わからないわ…どうして!友達だと思ってたのに!」
「あなたを見ていると私の醜い部分が出てくるの。よく褒められた私の純粋な部分が奪われてしまうのよ!」
「そんな…」
「それだけじゃないわ…いつの間にかあなたは私の周りの人達の関心を奪っていった。」
そんな風に思われていたのか…クララの根底にあるハイジへの信頼が揺れていた。
266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[規制の馬鹿!意気地無し!]:2008/10/03(金) 13:05:34.70 ID:00ghteueO
「あなたが悪いのよ、クララ…」
「私から何もかも奪うんだもの…」
止めを刺すかのようにハイジは言った。
「私達…初めから会わなければよかったわね……」
「ハイジ…」
そんなこと言わないで…。
私はあなたが大好きなのに……。
「ふふふ…さようなら。馬鹿で意気地無しのクララ。あれは本音だったのよ。」
「ハイジ…待って!ハイジ―――――――――!!!!!!!」
扉の閉じる音がした。
クララは縛られて冬の山小屋に一人取り残されてしまった。
267 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:06:16.25 ID:aaAYrDs70
ハイジひでぇ
270 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:07:07.50 ID:00ghteueO
「ハイジ…ハイジ………」
自分はハイジを苦しめていた…。
本当は気づいていたわ。
気づかないふりをしていてごめんなさい…。
ハイジ…でも…私はあなたと仲良くしたいわ。
一緒に過ごすって約束したじゃない……針千本…飲ますわ…よ…………。
271 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:08:10.81 ID:iWlG6QW50
>針千本…飲ますわ…よ…………。
学校であった怖い話が脳裏をよぎる
272 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:08:48.46 ID:00ghteueO
これでよかったのだろうか…。
ハイジは自問する。
クララ…寒いだろうな…怖いだろうな…お腹すいてないかな…………。
こうすれば楽になれると思ったのに、思い浮かぶのはクララを気づかうものばかり。
クララ……………。
ハイジは立ち上がった。
そしてありったけの食糧とコートを持って、再び山小屋へと出かけた。
273 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:10:15.06 ID:zGzWOHYiO
おぉ
274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:10:27.28 ID:00ghteueO
ハイジ…ハイジ…もし来てくれるなら、今回は特別に許してあげるわ。
だから…お願い…。
私のこともそうだけど、あなたも苦しむわ…。
やり直せるわ…だから…早く来て…なんだか……私……眠く………………。
278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:11:14.38 ID:00ghteueO
「クララ!」
クララを置いた場所に向かう。
「クララ………?」
クララは寝ているように見えた。
「クララ!ごめんなさい!もう二度としないわ!本当にごめんなさい!私…あなたが誰よりも大切よ!約束だって思い出したわ!クララ………」
クララは目を開けなかった。
ハイジは泣きながら全てのコートをクララに被せ、火をおこした。
280 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:12:57.39 ID:E8SSErVTO
クララ……
281 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:13:05.54 ID:N5ZitEqZO
うわあああああああああ
これは凄まじい鬱エンドの予感
282 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:13:49.99 ID:ItxK0ZEJO
クララが・・・・クララが逝った!!!!!11
283 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:14:03.86 ID:00ghteueO
「モミの木さん…今までありがとう」
ハイジは穏やかな顔をしていた。
その後ハイジは小屋に戻り、いつものご飯を食べた。
その後暖炉にコートなどをくべ、火を消さなかった。
284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:14:10.63 ID:zGzWOHYiO
欝だ…
285 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:14:17.71 ID:f8c8hp8X0
あ…あ、クララぁー…
287 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:16:33.79 ID:sXeqNYsoO
いやあああああああああああ
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱
288 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:16:40.14 ID:00ghteueO
ハイジはクララの亡骸とともに上に行き、わらのベッドに横たわった。
クララ…ごめんなさい。
私…なんでこんなこと…。
おじいさん…ごめんなさい。
私は…強く優しい子にはなれなかったわ。
おじいさんは…私にお父さんみたいになってほしかったのよね…?
私は誰に必要とされていたのかしら…。
クララ…?
ふふふ…今気づくなんて本当に馬鹿ね……。
289 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:17:13.38 ID:N5ZitEqZO
うわぁ……
290 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:17:48.33 ID:00ghteueO
ハイジは隣のクララを抱き締めた。
「私馬鹿ね…あなたを憎んでたなんて。二人で生きていけばよかったんだわ…」
「でも…もう遅い…」
煙が上ってきた。
「よく眠れそうよ。ね、クララ」
292 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:19:34.96 ID:00ghteueO
ハイジは死ぬ間際に気づいた。
自分は負の考えに支配されていたと。
いつからか過去の汚点ばかりを気にして自分を見失っていたこと…。
「ふふふ…おかしいわ」
まるで遊んでいるかのような言い方だった。
「ねぇクララ」
「人は死んでしまうとどうなるのかしら?」
ある日の会話が浮かんでくる。
「さぁ…天国に行くんじゃないかしら?」
「そう…じゃあみんな天国で幸せに暮らしているのかな?」
「そうね…きっとそうよ」
アルムの山小屋は二人と様々な思考を包んだまま燃え続けた。
おわり
293 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:20:29.13 ID:N5ZitEqZO
乙…、ハイジが不器用すぎる
294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:20:31.31 ID:zGzWOHYiO
おつかれ!!
295 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:21:07.88 ID:wHiQ5eUO0
クララしねばいいのにな
296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2008/10/03(金) 13:21:49.22 ID:pO/H/VrvO
全滅かよ・・・